統計から見る男性の育児休業

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統計から見る男性の育児休業 育児休業を取らなかった理由 男性と女性の考え方の違い 1年間の育児休業を終えて

統計から見る男性の育児休業

「働き方改革」の名のもと、官民一体となって男性の育児休業の取得を推進している状況ですが、まずはその育児休業の実態を統計資料から見てみましょう。

当サイトのデータは厚生労働省が公表する「雇用均等基本調査の結果概要」に基づいています。詳しくは下記リンク先をご覧ください。

雇用均等基本調査の結果概要|厚生労働省HP

1. 育児休業取得率の推移

まずは男性と女性の実際の育児休業取得率の推移を見てみましょう。次のチャートは直近10年間(2008年~2017年)の育児休業取得率の推移になります。

チャートを見れば一目瞭然ですが、男性の育児休業取得率は女性と比べて圧倒的に低いのが現状です。女性の取得率が80%超であるのに対し、男性のそれは1%~5%と、ほんのわずかです。

それでも、2017年(平成29年)の男性の育児休業取得率は、統計を取り始めて以来最も高く5.14%と過去最高でした。

恐らく今後もこの割合は徐々に増えて行くのではないかと思います。とは言え、まだまだ男性の育児休業がマイナーなものだということが分かります。

ただ、チャートを見ると女性の育児休業取得率が年々下がっているのが気になります。

2008年の取得率が90.6%であったのに対し、2017年には83.2%と5%以上低くなっています。

労働生産人口を増やす事を目的として、女性の社会進出を後押しする「育児休業制度」があると思うのですが、育児休業を取らずに、退職を選択する女性が増えているというのは、少し気になるところではないでしょうか?

2. 育児休業の取得期間

次に男女の育児休業の取得期間を見てみましょう。育児休業取得率には男女の間で大きな差がありましたが、取得した期間にも差があるのでしょうか?

育児休業の取得期間の調査データについては、H27年(2015年)のものが最新になります。→他の育児休業に関するデータはH29年のものが最新です。

男性
女性

ご覧の通り、女性のほとんどが半年以上の育児休業を取得しているのに対し、男性のほとんどが1ヶ月未満という結果でした。

さらにこの1ヶ月未満の中身を見てみると、その半分以上5日未満という衝撃の短さでした。

上のチャートは平成24年と平成27年の男性の育児休業の取得期間の対比ですが、育児休業取得者の割合が増えているという事実とは裏腹に「5日未満」の育児休業を取得した人の割合がH24→H27にかけて増えていることが分かります。

男性の育児休業取得者が徐々にではあるものの、年々増えているのにも関わらず、その期間のほとんどが1ヶ月未満(5日未満)と言うことであれば、実質的には何も変わっていないように思えてしまいます。

3. 事業規模別の育児休業制度の整備状況

では、企業側ではどの程度「育児休業制度の整備」が進んでいるのでしょうか?

本来、育児休業制度の整備は企業の義務であるため、100%整備されていないと法令違反になるわけですが、中小零細企業では実際のところそれはなかなか難しいようです。

規模別に見た場合

次のチャートは事業所の規模別に、育児休業制度がどの程度整備されているか?を示したものになります。

チャートを見てお分かりの通り、従業員が30人以上の事業所の方が、従業員が5人以上の事業所よりも、育児休業制度の整備が進んでいるということが分かります。

そもそも従業員が少なければ育児休業制度の整備をする余裕もないでしょうし、従業員1人1人の人的重要性が高いため、たった1人でも育児休業に入ることも大きなダメージになる、というのが実態なのだと思います。

産業別に見た場合

では、育児休業制度の整備状況を産業別に見るとどうでしょうか?下記の表は、産業別の育児休業の整備状況をまとめた表になります。

分類 産業
90%以上
  • 電気・ガス・熱供給・水道業
  • 情報通信業
  • 金融業・保険業
  • 教育・学習支援業
  • 複合サービス業
70%以上
  • 運輸業
  • 卸売業・小売業
  • 不動産業・物品賃貸業
  • 学術研究、専門・技術サービス業
  • 宿泊業
  • 飲食サービス業
  • 生活関連サービス業
  • 娯楽業
  • 医療、福祉
50%以上
  • 鉱業・採石業・砂利採取業
  • 建設業
  • 製造業

大雑把に言えば、女性が多く働く業界インフラ・金融・IT業界では育児休業の整備が進んでいます

女性が多く働く企業であれば、女性の育児休業取得を推進する動きが活発になるのは「労働力確保のため必須」ですので、制度の整備が進むのはある種当たり前のことと言えます。

また、インフラや金融業界については、そもそもの母体が大きいため、育児休業による従業員の欠員を十分にカバーできる土壌が備わっているのでしょう。

IT業界に至っては、多様性のある働き方(例えば在宅勤務など)が可能な業界であり、そもそも経営者の方に若い人が多いため、育児休業制度に対する理解も進んでいるのではないかと思います。

一方で、サービス業建築・製造業などでは育児休業精度の整備が遅れているようです。マンパワーに頼る業界や男性が多い業界では、まだまだ育児休業制度というのは馴染みが薄いのでしょう。

最後に

国が人口減少・少子高齢化を背景に、労働生産人口の増加を目的として「働き方改革」を主導しているわけですが、社員の1人1人の重要性が高い中小零細企業では、その実現が非常に困難なことなのだと、統計を見ると分かってきます。

従業者が育児休業を取らないという選択を取るのは自由なのですが、それが取れないような環境にあっては「男性の育児休業の推進」は図れないのではないかと思います。

育児休業を取ることで分かること、気付くこと、学ぶことなどがたくさんあり、また、これらの経験は日常の社会人生活を送るだけでは、得ることが難しい経験でもあります。

とても難しいことだとは思いますが、働く者の権利である「育児休業」が誰にとっても取りやすい環境になれば良いなと思います。

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